23区通勤5年あっても受給ゼロ — 移住支援金「雇用保険被保険者」要件の落とし穴【2026年版】
移住補助金シミュレーター編集部
Editorial Team
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「東京23区の会社で5年以上働いた。地方移住したら移住支援金100万円もらえる」——そう思っていたのに、実際に申請窓口で「対象外です」と告げられる人が一定数います。
理由のほとんどは、見落とされがちな 「雇用保険被保険者としての通勤」 という要件です。この記事では、2026年現在の国制度をベースに、なぜ業務委託・フリーランス・週20h未満パート・役員が対象外になるのか、自分が当てはまるかどうかをどう確認すればいいかを、具体的な条文と回避策まで踏み込んで解説します。
国の移住支援金 — 「23区通勤」要件の正確な条文
内閣府地方創生推進事務局による国の移住支援金の対象者要件(公式ページ)は、次のように定められています。
住民票を移す直前の10年間のうち通算5年以上、東京23区内に在住していた、又は東京圏(条件不利地域を除く)に在住し東京23区内への通勤をしていたこと。
ただし、東京23区内への通勤については、雇用者としての通勤の場合にあっては 雇用保険の被保険者としての通勤に限る。
ポイントは最後の一文です。「雇用者としての通勤」は 雇用保険被保険者であった期間しかカウントされません。
なぜ「雇用保険被保険者」に限定されているのか
この制度は地方創生・東京一極集中の是正を目的に、内閣府が令和元年度から運用しているものです。「東京圏で働いていた人材が地方へ流出することによる経済効果」を狙う制度設計上、「客観的に通勤実態が証明できる人」を対象としています。
雇用保険は、雇用契約に基づく正規・準正規の労働者であることが厚生労働省により明確に管理されている公的制度です。このため、「雇用保険被保険者であった」という記録があれば、その期間中は確実に23区の事業所に通勤していた(または雇用関係にあった)と国が認定できる、という運用になっています。
逆に言えば、雇用契約のない働き方(業務委託・フリーランス)は、客観的な通勤実態の証明手段として国が用意した枠から外れている、ということです。
対象外になる主なパターン
1. 業務委託・フリーランス・個人事業主
最も該当者が多いパターンです。
- 23区にあるクライアントから業務委託で受注している
- 自分は個人事業主としてフリーランス契約で常駐
- 23区のオフィスに毎日出社していた
- 確定申告も毎年している
このような働き方は すべて対象外 です。雇用契約ではなく業務委託契約のため、雇用保険に加入していないからです。たとえクライアント先で社員と同じデスクに座り、同じ時間に出退勤していたとしても、契約形態が「業務委託」である限り認められません。
2. 週20h未満・31日以上の雇用見込みなしのパート
雇用保険の加入要件は、次の2つを満たす場合とされています(厚生労働省)。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがある
これに該当しない短時間パート・短期アルバイトは雇用保険未加入のため、23区内での就労実績があっても通勤要件のカウントには含まれません。
3. 役員(兼務型でない場合)
法人の役員(取締役・執行役員等)は原則として「労働者」ではなく「経営者側」とみなされ、雇用保険の被保険者にはなりません。例外的に、役員と労働者を兼務する「使用人兼務役員」の一部のみが雇用保険対象になります。
スタートアップの取締役として23区で5年働いた場合、雇用保険被保険者ではないため対象外となります。
4. 在学中の通学
学生として23区の大学・専門学校へ通学していた期間は、就労ではないため雇用保険被保険者ではなく、通勤要件には含まれません。卒業後の正社員勤務期間からカウントが始まります。
対象になる主なパターン
逆に、雇用保険被保険者として23区へ通勤していた以下のケースは対象です。
- 正社員(雇用保険加入)
- 契約社員(週20h以上・31日以上の雇用見込みあり)
- 派遣社員(派遣会社で雇用保険加入。23区の派遣先で就労)
派遣社員の場合、雇用主は派遣会社(多くは23区外にある)ですが、実際の派遣先(就業場所)が23区であれば通勤要件を満たすと一般的に解釈されます。詳細は移住先自治体に確認してください。
自分が対象かどうかの確認方法
ステップ1:ハローワークで雇用保険被保険者証を確認
最も確実なのは、最寄りのハローワークで「雇用保険被保険者証」を取得することです。これには過去の雇用保険加入履歴がすべて記載されています。在職中の方は会社の人事部からも取得できます。
ステップ2:被保険者期間を集計
被保険者証に記載された各事業所の「資格取得日」と「資格喪失日」を確認し、通算被保険者期間を計算してください。直近10年間で通算5年以上、かつ事業所の所在地が23区内であれば要件を満たします。
ステップ3:会社の人事部に「就業証明書」発行を依頼
申請時には、会社から発行される「就業証明書」が必要になります。これに勤務地(23区内)と雇用形態(雇用保険被保険者)が明記されているかを確認してください。
雇用形態を変えれば対象になるか
「今フリーランスだが、これから正社員に戻れば対象になるか」という質問もよくあります。
国の制度では、移住の直前10年間で通算5年以上の雇用保険被保険者期間 が必要です。つまり、これから正社員に戻ったとしても、過去10年間に既に5年以上の雇用保険被保険者期間があれば対象になります。
たとえば、新卒で正社員5年→フリーランス5年というキャリアの方は、最初の5年間が雇用保険被保険者期間としてカウントされます。直近10年に収まっていれば要件を満たすので、フリーランスである現在も移住支援金の対象になり得ます。
受給した場合の金額(福島12市町村ベース)
雇用保険被保険者要件をクリアし、東京圏から福島12市町村(公式)へ移住した場合の最大受給額は次の通りです(令和8年度)。
| 区分 | 国基準 | 福島12市町村 | | :--- | :--- | :--- | | 単身 | 60万円 | 120万円(国基準の2倍) | | 世帯 | 100万円 | 200万円(国基準の2倍) | | 子加算(18歳未満1人) | 100万円 | 100万円 |
12市町村は、田村市・南相馬市・川俣町・広野町・楢葉町・富岡町・川内村・大熊町・双葉町・浪江町・葛尾村・飯舘村です。
さらに、移住して新たに起業する場合は 福島12市町村起業支援金 最大400万円(公式)も併給できます。世帯200万+起業支援金400万で 合計600万円。
まとめ — 申請前のチェックリスト
- [ ] 直近10年間の雇用保険被保険者証を取得した
- [ ] 通算5年以上の被保険者期間が23区内事業所にある
- [ ] 業務委託・フリーランス期間は除外して計算した
- [ ] 週20h未満パート期間は除外して計算した
- [ ] 移住先自治体に必要書類を確認した
- [ ] 移住後1年以内に申請する(期限あり)
「23区で長く働いた」という実感だけで判断せず、雇用保険被保険者であった期間を客観的に確認することが、確実な受給への第一歩です。
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⚠️ 免責事項
※本記事の制度情報は執筆時点または最終更新時点のものです。自治体の予算状況や制度内容は予告なく変更される場合があります。最新かつ正確な情報は、必ず各自治体の公式サイト等でご自身でご確認ください。